開催趣旨

このたびは、数学協働プログラム「確率的グラフィカルモデルの産業界への応用」 のサイトにお越しいただき、ありがとうございます。本イベントは、2016年 11月10日(木)から11日(金)にかけて、人工知能学会合同研究会の中で 開催される講演会です。 図1

確率的グラフィカルモデルは、ベイジアンネットワーク、マルコフネットワークといった 変数間の依存関係を表現するグラフとして定義されます。通常の統計学や機械学習では、通常は1個または2個の変数の振る舞いを扱います。確率的グラフィカルモデルは、(巡回のない)有向または無向のグラフで、一般の複数の変数の振舞いを扱うので、自由度が大きくなり、より広い範囲に応用されるように思われがちですが、実際には、必ずしもそうなってはいません。

まず、変数の個数が大きくなると、データから知識を学習するいわゆる学習(設計)段階、知識と 一部の変数の観測値からそれ以外の変数の分布を計算する推論(運用)段階のいずれのフェーズにおいても、変数の個数に対して指数的な計算量が要求されます。極端な言い方をすると、 何らかの近似がないと、まともに動かないといっても、過言ではないと思われます。 図2

もう一つは、数学的に難しく、理解するのに敷居が高いということがあります。たとえば、ベイジアンネットワークでも、人工知能の研究者で、理論を完全に理解している人は少なく、だましだまし応用している人が多いようです(挙動を理解していなくても、性能を実験的に評価するとか)。 人工知能全体からすれば、確率的グラフィカルモデルは 道具にすぎないという考えは、ある意味オーソドックスであるかもしれません。

さらにあげると、ベイジアンネットワークを使おうにも、スクラッチでシステムを構築することは不可能に近く、研究者でない限り、 ひな形やツールのようなものがないと、断念せざるを得ないように思われます。 本

今回のイベントは、2015年3月に電気通信大学で開催された 数学協働プログラム「確率的グラフィカルモデル」の続編という位置づけができるかもしれません。10名の講師の方をお招きして、2日間で120名の方にご聴講いただきました。その中で、 参加者の半数が非研究者、とくにデータサイエンスに従事されている方々でした。そして、その講義録(わかりやすく書き直したもの)が、共立出版から「確率的グラフィカルモデル」というタイトルで 2016年7月に出版されています。 その意味で、 前回のイベントは、「理解するのに敷居が高い」という問題に対して、一定の成果はあったのではないかと、考えています。

ところで、人工知能学会も今年で設立30年になります。「人工知能って、そんな昔からあったのですか」という方もいらっしゃるかもしれません。なぜ、注目されなかったのかを一言でいえば、「大学の外に出なかったから」という答えをされる方が多いように思われます。そして、同じ人工知能の分野の中でも、確率的グラフィカルモデルでは、 現在も「大学の外に出ていない」という症状から抜け切れていない、と言っても過言ではないように思われます。

思い起こせば、前回の開催でも、講演者は、大学の研究者ばかり、しかも理論の話ばかりでした。

今回の主要なテーマは、「確率的グラフィカルモデルを、いかにして大学の外に出していくか」ということにあります。技術が大学の外に出れば、企業からのニーズが高まり、研究費やポストの数も増えていく。そういう方向にカジを切るにはどうすればよいかということです。当たり前のことができていない、何とかしようということです。

そのような折、2016年4月に産業技術総合研究所人工知能研究センター(AIRC)の会合が開かれた際に、本村陽一氏(AIRC)、磯崎隆司氏(ソニーCSL, AIRC客員)と私(AIRC客員)とで、確率的グラフィカルモデルの成果を大学の外に出していくにはどうしたらよいかという問題意識で意気投合し、2015年3月とは別の方向(企業の方々)の講演会のようなイベントを開いてもいいのでは、という方向が定まりました。 AI学会30周年

また、前人工知能学会会長松原仁先生(はこだて未来大学)、人工知能学会基本問題研究会主査の河原吉伸先生(阪大)とも相談してみました。そして、2016年11月の人工知能学会合同研究会でそのような講演会を開催したらどうかということになり、統計数理研究所(所長: 樋口知之) 数学協働プログラムに申請してみました。2015年3月の開催の際にお世話いただいたので今回は難しいように思えましたが、今回の開催の趣旨を理解していただき、はからずも採択していただきました(2016年6月)。

人工知能学会が新体制で出発(2016年6月)してからは、新会長山田誠二先生(国立情報学研究所)、合同研究会実行委員長中臺一博氏(ホンダ)のもと、30周年を迎える 人工知能学会の合同研究会が盛り上がることにことに貢献できるよう、企画の詳細をつめてきました。

第1日目は、基調講演の本村先生を始めとし、企業およびAIRC関係の方々にご講演いただくよう、お願いしました。その後の講演は、2グループにわかれます。 確率的グラフィカルモデルの分野で活躍されている方々による講演と、人工知能の分野で産業界で活躍されている方々による講演です。1日目の最後は、「パネル討論: グラフィカルモデルは、データ分析の主役になりうるのか」の議論でしめます。

また、2日目(午前のみ)は、廣瀬先生と私で、確率的グラフィカルモデルのRパッケージについてのハンズオン(100名限定)を開催することになっています。

参加される皆様にとって有意義な2日間となるよう、つとめていきたいと考えております。皆様、よろしくお願いします。

鈴木 植野 本村 磯崎 河原
鈴木 譲 植野真臣 本村陽一 磯崎隆司 河原吉伸
(実行委員長、阪大) (電気通信大学) (AIRC) (ソニーCSL) (阪大)